伊川易伝爻辞
およそ損の義に三つあり。己を損して人に従うこと、自ら損して以て人を益すること、損道を行いて以て人を損することなり。己を損して人に従うとは義に徙るなり。自ら損して人を益するとは物に及ぼすなり。損道を行いて以て人を損するとはその義を行うなり。各々その時に因りて大なる者を取りてこれを言う。四・五の二爻は己を損して人に従うを取り、下体の三爻は自ら損して以て人を益するを取る。損時の用は損道を行いて以て天下のまさに損すべき者を損するなり。上九はすなわちその損を行わざるを取りて義となす。九は損の終わりに居り、損極まりてまさに変ずべき者なり。剛陽を以て上に居るに、もし剛を用いて下を損削せば、上たるの道にあらず、その咎大ならん。もしその損を行わず、変じて剛陽の道を以て下を益せば、咎なくしてその正を得、且つ吉なり。かくの如くなればすなわち往く所あるによろしく、往けばすなわち益あらん。上に在りて能くその下を損せずしてこれを益せば、天下たれか服従せざらん。服従の衆には内外あることなし。故に「臣を得て家なし」と言う。臣を得るとは人心の帰服を得るを言い、家なしとは遠近内外の限りあることなきを言うなり。